27 January 2011

Pure Farmingとは

皆さんは Pure farming (自然栽培)という言葉を聞かれたことはありますか? 私は、 Natural farming (自然農法)という言葉を聞いたことがあったのですが、Pure Farmingははじめての言葉でした。

Natural Farmingという言葉は、一昨年ぐらいでしょうか、偶然手にしたオーストラリアの「Organic Gardener」(ABC出版)という雑誌のページをめくっていると、 日本人の名前が目に留まりました。そこには、Mr. Masanobu Fukuoka(福岡正信氏)の悲報が伝えられ、彼の功績がまとめられていました。その時に初めて Natural farming という言葉に出会い、この自然農法とはなんなのか、興味が湧き始めました。

そうこうしているうちに、これまた偶然、オーストラリア、Cowra(第103回)でPure Farming を実践されているグループの方に会う機会を得る事ができました。このグループが今回紹介する「オーストラリア北之台開発(株式会社)」です。

去年、Cowraの桜祭りが9月21~22日の2日間に渡り行われ、私も訪れる機会がもてました。会場となったJapanese Gardenでは、太鼓、琴、尺八、雅楽などの演奏、生け花、お茶会など盛りだくさんのイベントが行われていました。両日ともに、強い風が吹き、少々肌寒く、天候に恵まれていたというわけではありませんでしたが、それでも大勢の人が集まり、庭園内は大変にぎわい、戦争という歴史の上に、多くの人の平和の願いをこめてこのイベントを毎年行っている主催や参加者の方々の長年の貢献に、胸が熱くなり、自然と感謝の気持ちが沸いてきました。私も、多くの方の協力を得て、この桜祭りで「包丁式」(第87~88回)を行いました。その中で、「包丁式」を一段と盛り上げてくれたのが、オーストラリア北之台開発の雅楽の演奏でした。

Pure farmingと雅楽? と、初めて聞いたとき、このふたつの繋がりが不思議で仕方がありませんでした。みなさんは想像がつきますか?このつながりをオーストラリア北之台開発のマネージャーの佐野さんにお聞きしました。

北之台開発は、1994年に設立、千葉県いすみ市を本拠地として活動されているとのことです。長年自然栽培に携わった井口昌二初代社長が「人々が心身ともに健康になるように」という願いをこめて、会社を設立。健全な体を育むための自然栽培と自然食事事業を行い、それと同時に、人々の精神性を高めるための雅楽事業も行い、これらを会社の柱として事業の展開されてこられたそうです。

みなさんは、雅楽の音色を聴かれたことがありますか? 私は雅楽を聴くと、なんだか時空を超えるような不思議な気持ちが湧き上がってきます。雅楽にはそんな不思議な魅力があります。私は、雅楽には触れたことはないのですが、とても繊細な楽器だそうです。農作業の合間に、雅楽の演奏を行うスタッフの気持ちを想像すると、井口社長が願った「心が健康に・・・」という思いが伝わってくるような気がします。

北之台での活動を通して佐野さんらは、「現代社会は人を健康に導くことよりも病気に導くことの要因があまりにも多いのが現実で、食品への化学物質の投入や遺伝子操作された農作物、日常生活における環境ホルモンの問題、地球規模で問題となっている地球温暖化。こうした問題はどこから発生するのであろうか」と問いかけられています。

これらの問題は、昨今、耳にしない日がないほどテレビ、新聞などで報道され、早急の取り組みが必要とされていますが、なかなか劇的な動きは見られいないような気がします。

佐野さんらは、その原因と解決法を次のようにまとめています。「それは、人のことよりも自分のことを優先する心が強く働くことによって生まれる現象である、と考える。社会、世界の利益よりも個人の利益を優先することが大きな問題を発生することにつながっているのであろう。こうした社会にあって、自然栽培の取り組みは、一個人の健康を守るだけでなく、それが広がることにより、自然環境をも守り、拡大すれば地球環境を守ることへと発展されるであろう」

北之台開発は、自然栽培を通して作物を育てるというひとつの活動を通じ、それ以上のメッセージをわれわれに送ってくれています。自然栽培と口で語るのは簡単ですが、日々、自然と向きあう大変な仕事です。

佐野氏によると、自然栽培は日本では50年以上の実績をもって栽培が続けられていということです。その理念は「自然を尊重し、自然に順応させることであり、太陽と水と土の力で作物を栽培するのがその原理です。自然栽培とは、自然生態系を壊すような農薬や化学肥料、動物性の堆肥等を一切使用せずに、高品質で安定した食糧生産をすることを目的とした農法であります。これは、地球にもやさしく永続性のある栽培方法で、その土地の気候、風土等の自然環境に順応し、敵地適作を基本とする環境適応型農業ともいえる」ということです。具体的な土づくりは、プラウを使用して土壌を耕転させ、土の下方の硬い層を土壌表面に出し、天日や風雨にあてて自然浄化させいく、このことにより、作土層が深くて柔らかい土が作られます。また、自然栽培のポイントは、作物の根伸びをよくすることで、同時に、よく根の張る作物(トウモロコシや小麦等)を栽培することによって、より作物の根を深く張る効果があげられる。このことによって病害虫の発生を抑え、美味しい作物ができるようになる。

私も北之台開発の野菜をいただいたのですが、とても水々しくて、形も整っていて本当に美味しかった。野菜の本来の味がするとでもいったらよいのでしょうか。オーストラリアで手に入るオーガニックの野菜はどちらかというこれらの点に欠けるので、彼らの野菜を見たときは、自然栽培でここまで作れるのかと驚きました。

「人の健康を願うということは、生産---流通---消費が行われる社会の中で、一貫して健康ということを貫いていかなければならない。一生産者がどれほど自然栽培に努力したところで、この課題を達成することは不可能に近いことであろう」と。だからこそ、オーストラリア北野台開発の使命は、自然栽培の考え方が多くの人々に共感されるような取り組みを続けていくことだ、ということでした。


オーストラリアは自然が豊かな国といわれますが、しかしながらとても厳しい風土を持ち合わせています。このところの異常気象は、彼らの農場にも水不足という苦境に立たされています。次回は、このような状況下で、多くのひとに共鳴されつつある北之台開発の活動に触れていきます。

北之台開発
http://kitanodai.co.jp/

北之台雅楽会
http://www.kitanodaigagakukai.org/


http://career.alc.co.jp/kaigai/ryori/bn/138.htmlより引用

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